トレーサビリティを追求した事業がこれからの経営に必要なわけとは?

経営事業

「自社(自分)だけが良ければいい」という経営は、とうの昔に終わりを告げ、現在はシェアやイノベーションなど、CSV(共有の価値)を生み出しながら、地域と共に環境や社会に優しい事業をしていこうという考え方が広がってきました。

そして、そこから先にさらに広がりを見せているのが、サステナビリティ(持続可能性)やエシカル消費(倫理的な消費)という考え方です。
(今、経営戦略に重要な”サステナビリティ”とは?)
(エシカルを意識した経営方針で未来を生き抜く企業に!)

「自分さえ良ければいい」という経営では、どこかの誰かにそのしわ寄せが行ってしまい、その結果、環境や人権にダメージを与え、いずれは自分たちに跳ね返ってきます。

環境にダメージを与えれば、災害となって返ってくる。

これは変わることのない自然の法則です。

人が人を力で制圧し支配しようとすれば、それはやがて命の奪い合いになる。

これも変わることのない原則です。

しかし、われわれ人間は、その法則や原則を犯し、戦争や紛争で、大地も海も大気にもダメージを与え、それは今でもどこかの国では続いています。

豊かに暮らしていくために、様々な科学や技術の開発がされてきましたが、その反面、有害な煙を撒き散らし、汚水を海や川に垂れ流してきました。

その代償に、今も多くの人々が病気で苦しみ、海の生物を絶滅の危機に追い込んでいます。

現在でもまだ、終わりを告げたはずの「自社(自分)だけが良ければいい」の発想は生き残っているのです。

「そんなつもりはない」と、いう経営者の方も多いはず。

あなたも一経営者として、困っている人や願望を持っている人たちのため、みんながより良い暮らしをしていけるように事業を展開し、お客さんの喜ぶ顔を浮かべながら、従業員たちと共に日々働いているはずですよね。

1つの製品が顧客の手元に届くまでには、製品の原材料、卸売、加工、流通、販売、アフターサービスなど、様々な過程が生まれますが、これを『サプライチェーン(供給の連鎖)』といいます。

このサプライチェーンの過程ごとに、ビジネスが取り交わされるわけですよね。

あなたが経営している会社も、この過程のどこかに位置付けた事業を行なっているはずです。

仮に食品の加工業を経営していたとして、経営者のあなたは、サプライチェーンの端から端までを、どんな業社さんが絡んでいるのか?最後にはどこに売られていくのか?など、しっかり考えたことがあるでしょうか?

考えておられるようであれば、この先を読む必要はありません。

この先を読まれたい経営者の方に向けて、続きを書いていきますね、

サプライチェーンの過程をしっかり確認していないことで、気づかぬうちに知らぬ誰かを傷つけたり、害を与えてしまう、または被害に巻き込まれてしまう可能性が出てきてしまいます。

あなたが経営している会社だけが、一生懸命に困っている人のために事業を展開していたとしても、これではうまくいきませんよね。

今回は、このサプライチェーンの流れをしっかりと確認しながら、事業を展開する経営ができるよう、『トレーサビリティ』について考えていきましょう。

トレーサビリティの追求は、これからの事業を進めていく上では、欠かせない考え方なので、深掘りしていきます。

トレーサビリティを追求しない事業の最悪な結末とは?

では、まずトレーサビリティとは何か?について考えていきましょう。

トレーサビリティとは日本語では「追跡の可能性」という意味です。

2000年代初頭に発生したBSE問題は、飲食業界を震撼させました。

BSEという病気にかかった牛の、食品販売の目的での輸入について、社会的な問題が起こったのです。

さらには、企業による牛肉偽装問題も多数発覚し、消費者への不安と危険を増大させました。

先ほど、あなたが食品加工業を経営していたとして、というお話をしましたが、取引している食品の原材料メーカーが、もし産地や品質を偽った原材料を販売し、それを知らずにあなたの経営する食品加工会社が使用し、流通に乗せていたとしたら・・

その食品が最後に行き着くのはどこでしょう?

100歩譲って、産地はまだしも品質を偽われば、それが食べた人間の体に害を及ぼすのは当然のこと。

低品質で低価格なものを売り、高い利益を得ようとする。

流通に流れれば巡り巡って、自分の身近な大切な人たち、そしてあなた自身の口にも入ることになるのです。

偽装は明らかに「自社(自分)さえ良ければ」の経営発想です。

そんなことを繰り返せば、自然の法則や原則を犯すのと同様に、やがては自分たちに跳ね返ってくるということは、容易に想像がつくことですよね。

だからこそ、トレーサビリティ、追跡の可能性を追求することが重要なのです。

経営に必須!東京2020大会でも重視されているトレーサビリティ

残念ながら「自分が経営している会社は、一生懸命世の中のために事業をしている」だけでは、真に「世の中のために」「会社のために」の事業とはならないのです。

食以外の業界であっても、トレーサビリティの重要性は同じです。

例えば、建設会社が費用を抑えようと、材料の品質を偽ったり、加工工程を手抜きした建物を建てたらどうでしょう?

製造生産だけでなく、それを販売している企業にも、サプライチェーンに入っている業種を経営している会社は、安心で安全な製品を安定的に、市場に供給する責任があるのです。

道の駅などでは、生産者の顔が見えるように、農家さんの顔写真などの情報を載せて販売しているのを見たことありませんか?

これこそトレーサビリティの分かりやすい形ですよね。

新型コロナウイルスの影響で延期になった東京2020大会ですが、ここでもトレーサビリティは重要視されています。

農林水産省の資料によると

===
「組織委員会は、持続可能な大会運営を実現するため、原材料調達・製造・流通・使用・廃棄 に至るまでのライフサイクル全体を通じて、環境負荷の最小化を図ると共に、人権・労働等社会問題へも配慮された物品・サービス等を調達する。」
<4つの原則>
(1)どのように供給されているのかを重視する
(2)どこから採り、何を使って作られているのかを重視する
(3)サプライチェーンへの働きかけを重視する
(4)資源の有効活用を重視する
===

別の項目では

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(3)サプライチェーンへの働きかけを重視する ・組織委員会は、サプライヤー及びライセンシーに対し、組織委員会が調達する物品・サー ビス等について、サプライチェーンにおいても本調達コード並びにトレーサビリティ及び透明性の確保に努めるよう求める。
===

との記載があります。

東京2020大会で使用される食材は、”GAP認証”というものを取得した食材しか使うことができません。

安全を追求するためには、このようにトレーサビリティの追求が重要視されているのです。

裏を返せば、各サプライチェーンが、トレーサビリティをきちんと意識して、それを証明しながら経営していくことで、「この会社の製品やサービスは安全」という認識が増えれば、ブランド効果も高まり、選ばれる会社になっていくのです。

業種問わず!経営者はトレーサビリティを追求した事業をするべき

本来、トレーサビリティとは

物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態をいう。

と、一言で説明するとこういうことになります。(WikiPedia)

しかし、物品だけでなく、対人のコミュニケーションをビジネスとした経営スタイルの会社ではどうでしょうか?

芸人さんが反社会勢力の会合に出席し、金銭を受け取った”闇営業問題”。

芸人さんの中には「反社会勢力だと知らなかった」という人もいますし、「一般の人かと思って、知らずにただ写真を撮っただけ」という人もいます。

事の真相は分からないし、事務所に黙って契約外の仕事をした事は良くないですが、「どこの誰、どんな会社で働いている、どういう人物なのか?」ということを確認しないで、ビジネスを交わしていると、こういう問題にぶつかり、社会的に除外されかねなくなってしまいます。

芸人さんの問題に限らず、仕事をする相手の素性をしっかり把握しておかなければ、”知らぬ間に”良くないことに加担していることになってしまうのです。

本来の定義とは異なりますが、これもまたトレーサビリティの追求、「出所と行き着く先」を意識していかなければいけない、事業を行なっていく上での経営のあり方の必須要素だといえますよね。

BtoBやBtoCなど、様々な事業モデルはありますが、人は一人では生きていけないのと同様、会社も他の会社や一個人との関わりなしでは、事業を展開していくことはできません。

行き着くところの最後には、この地球環境と、そこに生きる人間をはじめとする動物などの生命があることを忘れてはいけないのです。

選ばれる事業を展開していけるよう、そしてわれわれ自身が平和に安全に生活していけるよう、トレーサビリティをしっかり追求した経営をしていきましょう!

もちろん、経営者のあなただけでなく、従業員たちにもきちんと落とし込み、意識を高めていくことが必要とされているのです。

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