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今回は、経営者のあなたがこの思考を持っていないと、これからの持続的な経営や事業構築ができないというお話です。
まずは分かりやすい例えを先にお話ししておきましょう。
ある一人の一流の大工さんがいました。
一流なのにもかかわらず家が建てられません。
大工さんはこの道40年の大ベテラン、寸分の狂いもなく木材を切り、カンナで削り、釘を打てる超一流です。
後輩からの信頼も厚く、チームワークも抜群です。
にも関わらず、その大工さんは家を建てることはできない状況なのです。
それはなぜでしょう?
答えは「設計図がや工程表がないから」です。
事業にも同じことがいえます。
事業の計画や設計がきちんと立てられてない、行き当たりばったりの経営では目的地のない海を航海しているようなものです。
これでは絶対にゴールにたどり着けません。
たとえたどり着いたとしても、人員や設備投資など多くの労力を消費していることでしょう。
そもそもそこがゴールなのかも分かりません。
やっと着いた陸地が、何もない無人島かもしれないのです。
また、今の事業を進めていくにしても、新規事業を立ち上げるにしても、再び暗闇の中に船を進めていくのは、あまりに危険性の高い航海だということが簡単に想像がつきますよね。
このようなことにならないようにするには、”バックキャスティング”という手法を使うことが効果的です。
ではその、バックキャスティングとは何なのか?続きをご覧ください。
経営の未来を切り開くには「逆算」がカギ
改めまして、あなたは”バックキャスティング ”という言葉を聞いたことがありますか?
日本語では”逆算思考”と訳されます。
例えばあなたが今、学生だったとしますね。
英検取得に向けて勉強しています。
5級が受かったら、次は4級、そして3級・・と徐々にステップアップして英語のレベルを上げていき、それに伴い英検の級も上がっていくはずです。
ここで少し立ち戻ってみましょう。
あなたが英検を取得したい理由は何ですか?
就職に強いから?とりあえず資格として持っていれば役に立つから?
何年もかけてコツコツ勉強して1級を取得するのも努力や継続力があって素晴らしいことです。
でもこれでは時間がかかってしまいます。
例えば「大学を卒業したらアメリカに行って現地法人で働きたい」という目標があったとするならば、「生の英語に触れ、自分もネイティブに話せるようにならなければ」という考えが生まれ、”留学”という選択肢も出てくるのではないでしょうか。
「アメリカの〇〇社で就職」という明確な目標があるからこそバックキャスティング 、つまり逆算して「座学での英検の勉強よりも留学」という方向にシフトチェンジをして、計画を立てていくことができるのです。
これは経営や事業構築に置き換えても同じことがいえます。
中長期の事業や経営戦略こそバックキャスティングの考え方が最適
事業や経営がうまくいっていない多くの経営者は「まずはコツコツと順を追って」と考えがちですし、今までそれでやりくりできていたかもしれません。
しかしながら、今時代は大きく変わり、「環境や社会のために企業は何ができるのか」という見られ方が強まってきています。
そういう考え方にそぐわない経営方針だったり、事業を展開している企業は信頼を失っていきます。
その一番分かりやすい評価基準の一つとして、SDGs(エスディージーズ)やESG投資(イーエスジー投資)というものがあげられるのですが、その話はまたの機会に。
(ESG投資は信頼の証!SDGs経営があなたの会社を成長させられる理由とは?)
(SDGsを取り入れた経営戦略であなたの会社を大きく成長させるには)
バックキャスティングの手法は、中長期的な事業計画や経営戦略に特に効果を発揮します。
具体的には『長期的な”望ましい未来”、”在るべき未来”に向けて目標を設定し、そこからその目標に向けて、やるべきことを考える』という思考です。
バックキャスティングは「実現が困難とされる、簡単には叶わないような、大きく複雑な問題に対する目標、であればあるほど相性が良い」といわれています。
一方、その対義語としてフォアキャスティングという考え方があります。
『今ある現状から未来に向けて「何ができるのか」を考え、未来の目標に近づける』という考え方です。
英検5級を取得したら次は4級・・という一歩づつステップアップをはかるような進め方ですね。
「英検の級が上がれば履歴書にも書けるし、それなりに良い企業に就職できるかもしれない」というような思考です。
一見、言葉の言い回しの違いだけで、双方似たような考え方に思われがちですが、その効果は大きな差を生みます。
中長期的な経営や事業構築の側面から見ると、やはりバックキャスティングがかなり効果的であると考えられます。
経営や事業にも通じる絶対に揺るがない”原則”の視点からも証明されている
冒頭の大工さんの話に戻ります。
大工さんも長年の経験上、木を切って削って組み立てれば、とりあえず家を建てるだけなら設計図がなくても、もしかしたらできるのかもしれません。
でもその強度は?耐震性は?陽の光の指す角度は?何より生活のしやすさは?子どもや孫の代まで長期的に住むことを考えるほど、しっかりした設計図が必要になるということは、簡単に想像がつきますよね。
成功の法則が書かれた、経営者やビジネスマンのバイブルともいえる、7つの習慣という本には、絶対に揺るがない”原則”という視点で、
「すべてのものは二度つくられる」
「第一の創造は知的創造、そして第二の創造は物的想像である」
と書かれています。
第一の創造こそが、家を建てるという話でいえば「家族が長年住んでいける家の設計図・工程表を作る」こと、英語の勉強の話でいえば「アメリカの〇〇社で就職するという明確な目標設定をする」ということになります。
第二の創造は、大工さんが実際に施工を行うことだったり、英語を話せるようになるために留学することになります。
これを企業の経営や事業に置き換えたとしたらどうでしょうか。
もう少しだけ7つの習慣について深掘りしていくと、”終わりを思い描くことから始める”と書かれています。
”自分の人生の最後を思い描き、それを念頭において今日という一日を始めることである”と。
自分の人生の最後、自分の葬儀の時に参列者にどんなことを思われたいか?死を喜ばれるほど恨まれたいか?別れを悲しみ、出会ったことを感謝されたいか?
そうなれるように日々、目標を持って生きていこうということが書いてあります。
まさに長い人生、経営者のあなたは、企業も法人格として持続させていくために、中長期の事業計画や経営戦略が必要になることはいうまでもありません。
バックキャスティングは原則に基づいた手法ともいえますね。
あなたが経営している会社では、どんな未来を描き、どんな計画のもと事業を展開していますか?また新たな事業を展開していこうと考えていますか?
人類が月に行ったことこそがバックキャスティングによるもの
バックキャスティングの最も分かりやすい事例として、あまりにも有名な話が、『アポロ計画』です。
時のアメリカ大統領、ジョン・F・ケネディは、1961年に「10年以内にアメリカは人間を月に送り、無事帰還させる」と宣言しました。
当時はまだ、月に行くための具体的な開発はほとんどできていない状態でした。
ケネディ大統領は、実現が困難とされる、簡単には叶わないような、大きく複雑な問題に対する目標として「10年以内に月に行く」と言い放ったのです。
そしてその目標は現実のものとなりました。
「大統領は簡単に言ってくれるけど、研究開発しているこっちはたまったもんじゃない!本当に大変だよ!」という当時の声も聞こえてきそうですが、実際に達成されました。
また、ある男は「海賊王に俺はなる」と誰もが驚くものすごい宣言をして、泳げないのに一人で小舟に乗って海を進みました。
海に出て迷わないように「航海術を勉強してから」、途中でお腹が空いても大丈夫なように「料理ができるようになってから」ということなどせず、旅をしていく中で、自分には足りないスキルや技術を持った仲間をどんどん増やして、海賊王という目標に近づいています。
バックキャスティングとは、ただ無計画に闇雲に大きなことを宣言するものではありません。
大きな目標に向かって、達成するために何をするべきなのかを逆算して、物事を進めていくということなのです。
飛び抜けた天才でもない限り、自分の思考範囲だけで考えていては、大きな変化は起きないでしょう。
企業はバックキャスティングを取り入れた経営で事業を進めることこを最優先に
ビジネスでいえば、競合企業はみんな同じようなことを考えて、あなたの会社と似たような事業やサービスをしていることも少なくないはずです。
だとすれば「誰も考えないような」だったり、「無理だと思って誰もやろうとしないこと」にあえて着目して、社内でアイデアを募ってみるのもいいでしょう。
これからの新時代の中長期経営において、大小の差はあるにせよ物事の考え方として、特に経営者にはバックキャスティング思考は重要になります。
持続可能な世の中や経営が求められている中で、社長であるあなたは「経営すること」自体が長期的な事業の一つであるともいえます。
ここでポイントです。
バックキャスティングは、大きくなかなか叶わないような目標だからといって、「それに向けての行動まで急に大きなものにしろ」というものではありません。
逆算して「まずは目標達成に向けての第一歩として、あなたが経営する会社のスキルや商品を使って何ができるのか」を考えることが重要です。
大工さんも急に1日2日で大きな家は作れません。
細かな工程は僕にも分かりませんが、いきなり柱を立てることはなく、まずは第一歩として土台の基礎固めをするはずです。
”行き当たりばったり”ではなく、バックキャスティング で、常に先を見据えた計画と行動が必要ということですね。
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